専業主婦の徒然ぐさ

中学時代からン十年書き溜めた日記と画像を見ながら書いています

不思議な少女(7)

   みなさん、こんにちは。(6)からの続きです。例によって気持ちのわるい話です。苦手な方はスルーしてくださいね。 その時ー        

 

 ―と、背後で「チン」と音がして、エレベーターの扉が開くー自治会長さんが僧衣になった父住職をつれて上がってきた。「住職先生のパパ!」Kちゃんが目ざとくー声をかけた。自治会長さんはKちゃんとJちゃんをみていぶかしげな表情をしたが、父住職は「おお、Kちゃんか。今日は大人しくしているんだよ」とー

 

 その声音に非難的なものは一切なく、まるで(Kちゃんが来るのを予めしっていたー)、それどころか(Kちゃんがいて、安堵しているのではー)というふうに妹には感じられたそう。妹たちは二人の後についてお祓いの場所へー、既にそこで待っているメンバーは近づいてくる父住職の姿を認め、深々と頭を下げた。

 

 妹はいちばんあとからついていった。そのうしろに、KちゃんとJちゃんがー。お祓いの場所につくと、僧衣の父住職を一歩手前にして、自治会のメンバーがそれを取り巻くように立った。父住職はメンバーさんに一礼して簡単にお礼と注意事項を述べた後、特にKちゃんらにむかって「心を込めて、おいのりするんだよ」と優しくー

 

 前に向き直ると「では、始めます」と父住職は厳かに告げた。お経がはじまり、自治会のメンバーさんは一様に頭を下げて目をつむり手を合わせた。Kちゃんたちは?とみると、二人ともメンバーさんたちと同じ姿勢で目をぎゅっとつむっていた。しばらくそのまま続けていると、線路を電車が通過する音がきこえた。その音でー

 

 妹は目を開けた。父住職をみると僧衣の袖から遺髪をはったひとがたを取り出していた。最初のお経がおわりみんなが前に向き直ると、父住職は「今からひとがたをとばします」と宣言して手すりの方にさらに一歩すすみ、手を柵から出し「ひとがた」を線路に向かってとばした。メンバーさんはそれに見て、それぞれ手を合わせた。

 

 ーが、それまで大人しくしていたKちゃんが急に「住職先生のパパ、鳥がー」。と、同時にKちゃんは妹の手を「ぎゅっ」と握った。その刹那妹は瞬間的に意識を失ったーように感じた。頭がぼーっとして体がしびれたような・・・でもそれは本当に一瞬だったようだ。すぐに我に返るとー妹は見た。虫と勘違いしたのだろうか?

 

 屋上にとまっていた十数羽のすずめたちがひとがたを追いかけて、夕暮れの空へ飛び立っていた。鳥たちはひとがたのまわりをーまるでひとがたを守るようにしてーむれながら上へ上へと舞い上がった。不思議なことにひとがたはおちることなく飛び続けていた。Kちゃんが「住職先生のパパ」と鋭く声をかけると、父住職は二度目のお経を始めた。

 

 やがて、お経はおわり父住職と自治会長さんが丁寧にお礼を述べ、その場で解散になった。みんなくちぐちに「今日はよかったですね」と声を掛け合ってそれぞれの住居へと戻っていった。「先生、バイバイ。明日は学校来てね!」そういうとKちゃんはJちゃんと遊んで帰るといってちかくにあるJちゃんちの玄関へー

 

 気が付くと、妹は取り残されてー頭の芯がまだ、ぼーっとしびれているような感覚がー。ちょうど前を自治会長さんと父住職が話しながらあるいていたー父住職は魔除け(退魔)の札を持参したのでそれを集会室にはるように伝えていた。三人はそのままエレベータ―に乗り込んだ。目的階へ来ると妹は二人に挨拶をして降りた。

 

 その夜、妹は不思議な夢を見た