専業主婦の徒然ぐさ

中学時代からン十年書き溜めた日記と画像を見ながら書いています

ふしぎな女の子(6)

 みなさん、こんばんわ。

 気味のわるいはなしです。苦手な方はスルーしてください。

 

 その夜、妹は夢を見た。

 

 旧校舎の2階の廊下を、Kちゃんと手をつないで歩いてる夢ー

 Kちゃんのお願いで、二人は「小人のペンケース」をさがすためにKちゃんが二年生の時に使っていた教室に向かっている。でもふしぎなことに手をつないでいるはずのKちゃんの姿が見えない。ちょうど手をつなぐ形で妹の手が宙に浮いている。

 

 妹の横に、スリッパだけがーまるで誰かがはいているように動いてーならんでついてくる。そのスリッパが廊下にあたってたてる「パタパタ」という音が生々しく妹の耳に響いている。廊下側の窓、外には校舎を解体するための鉄骨(足場)が組まれていて、その周りはホロ(テントのような分厚い布)で覆われている。その為、廊下は薄暗い。

 

 ただ・・・ところどころ、ホロとホロを繋げている隙間から夏の強い西日が、細長く廊下に差し込んでいた。そこ(直射日光の筋)を通る時だけ、なぜかKちゃんの姿が白い輪郭だけで、体全体を透明にして浮かび上がった。ときどき妹は誰もいない空間に向かって笑いかける。そこで妹、「ああ、これは夢の中だなぁ」と、漠然とおもった。

 

 二人(妹と透明なKちゃん)は教室に入る。妹、Kちゃんの依頼で教室の後方にあった机(窓側ーカーテンが束ねてあった所)の一つを動かそうとする。妹が机の両端をつかんで持ち上げようとしたとき、透明のKちゃんが突然「先生」と言って妹の背中に強くしがみついた(ように妹には思えた)ーその瞬間妹は「動き」を失った。つまりー

 

 まるで金縛りに遭ったように体が動かなくなったー夢の中なので妹はそれを第三者のように見ていた。妹に抱きついた途端、Kちゃんの体が直射日光を浴びたときのように薄く実体を現した。と、同時に教室の隅(後方―窓側)から黒い靄のようなものが広がってきた。それ急速に大きくなり、妹の体全体を包み込もうとしていた。

 

 妹は体をよじってその黒い靄から逃れようとしたが動けるはずもなく、体全体が恐怖のため更に凍てついてしまった。刹那ー体を密着した部分を通してKちゃんの感情が妹の心の中に流れ込んできた。それは「恐怖」ではなく、なぜか「嬉々」としたものだった。妹は、背中にいるKちゃんが「フフフ」と低く笑ったように思えた。

 

 薄い輪郭だけのKちゃんは首を上げて、その黒い靄をにらんだ。その途端、黒い靄はKちゃんの体に向かって流れ込んでいった。まるでKちゃんに吸い取られるようにー。黒い靄が吸収されていくと、薄かったKちゃんの実体が徐々に濃く現れるようになった。妹はそれを驚愕の思い(表情は固まって動かない)で横目に見てた。

 

 黒い靄の一部分ーKちゃんから反対側にある一番遠い部分ーが逃れるように、靄の本体から離れだした。その部分が本体から離れるときに黒く固まって、一瞬悲しそうな男の子の顔になった。そして、先ほどそれが湧いてきた教室の隅にむかって雲散霧消してしまった。妹の背中にいたKちゃんは「ちっ」と舌打ちをしたーようだった。

 

 靄の本体を吸収して実体化したKちゃんは、妹の背中から離れて逃れた靄の一部分を探し出した。教室の隅に屈みこんだり、置いてある机の中をのぞき込んだりーその時、やっと妹の金縛りが解けたーと、同時に妹の目が覚めた。「一体何なの?」妹は今見た夢を可能な限り反芻してみた。「これが今日、現実に起こったことなのだろうか?」

 

 「まさか」と、妹はその考えを打ち消した。でも、どうしてもその夢が気になって仕方がない。それと、逃れた靄の一部分が消える直前あらわれた男の子の悲しそうな顔が忘れられない。夏休み最後の週、妹はその学校に一番古くからいる先生に「なにかあの(校舎)教室にまつわる因縁話」的なものがあるか、どうか聞いていみることにした。

 

 その方六年生担任の男性教諭、古手と言っても歳は四十前で、もともと家がお寺さん。近頃、お父さんの跡を継いで住職さんになった。平日は教諭でお休みの日は住職さんと農業を少々(お父さんは引退して農業をしてる)。住職をやってる都合上、遠距離への異動が難しく、比較的お寺の近くにあるこの学校に長年おられるとのこと。

 

 夏休み最終週ー職員の数もまばらになった午後、妹、勇気をだしてその先生に話しかけた。もともと話好きの気さくな人、妹、(Kちゃんのことは言わずに)取り壊される旧校舎にかこつけて、話を切り出した。「いよいよ、旧校舎も取り壊されますねぇ」「ところで、何かあの校舎にまつわる因縁話的なものってありますか?」てな具合。

 

 「例えば、どんな?」六年生の住職先生、話に喰いついてきた。妹「そうですねぇ。校舎二階、前の二年〇組があった教室とか?」。住職先生意外な顔をして「あの教室について何かT先生(妹がサポートしてる三年生の先生、その時のKちゃんの担任)から?」「いいえーなにも」。住職先生同じ表情のまま「そうですか・・・」と、

                                つづきます。