専業主婦の徒然ぐさ

中学時代からン十年書き溜めた日記と画像を見ながら書いています

ふしぎな女の子(2)

 みなさん、こんばんわ。

 妹が教師(担任)補助のパートさんで経験した話(1)のつづきです。

 

 三年生のT先生の補助をすることになった妹、Kちゃんという少し変わった女の子に気に入られますが、Kちゃんが妹を独占するような態度をとるようになりました。例えば「この教室(Kちゃんのクラス)に入ったら、私のことだけを見ていて」とかワガママ云われて、妹も困って担任のT先生に相談。

 

 T先生「あまりにもひどいようなら、放っておいてください」と。妹としてはT先生に「もっと、Kちゃんのことを気にかけてケアしてほしい」とお願いしたかったけど、自分の経験からT先生(担任)の大変さも分かるので、それは言えなかった。それで、一学期が終わって学校は夏休みに。正直、妹もホッとしたそうです。

 

 夏休みになっても、パートさんは月~金は出勤しないといけません。午前中は、麦わら帽子被って植物の水やりや運動場(校庭)の草抜き。午後からは運動会の準備です。低学年が運動会でもって踊る使具(?)を作ったり、ダンスの練習をしたり。他に、地区の教育委員会が主催する研修会とかボランティアに出席したりと盛りだくさん。

 

 日暮が鳴きだした八月下旬の日曜日、その学区の防災訓練がありました。学校の運動場が地区の避難場所に指定されています。午後4時ごろ地震が発生したという事で、家族と一緒に学校へ避難してくるのです。休みの日ですが妹も手伝いのために午後から出勤しました。午後4時になり、消防署のサイレンが響き渡りました。

 

 家族単位で三々五々、学校の運動場に避難してきます。妹は避難してきた人数と、事前に提出してもらっていた避難訓練の参加票を照合する係。運動場はたちまち避難してきた地区の人たちでいっぱいになりました。妹はその中にお母さんやお姉ちゃん(五年生)と一緒に避難してきたKちゃんを見つけました。

 

 妹の隣にいた教頭先生が「Kちゃんが来るなんて珍しい」と呟きました。訓練は消防署員、地区の防災委員や行政の防災担当者の話を聞いてその場で解散になります。帰っていく人達を校門近くで見送っていた妹は「先生」と、呼びかけられました。見るとkちゃんが無表情でお母さんとお姉さんと三人で立っています。

 

 妹はお母さんに挨拶して、「どうしたの」とKちゃんに訊ねました。「先生、私、前の教室に忘れ物したから一緒に取りに行って」とKちゃん。前の教室というのはKちゃんらが二年生の時に使っていた教室です。この学校は前年度に新校舎が完成して、3月の春休みを利用して引っ越しが行われました(妹も手伝いにかりだされました)。

 

 もともと校舎が「川の字」に三棟並んで立っていましたが、左側の一番古い校舎が取り壊されて、真ん中と右側の校舎をつなぐ新校舎が建築されて「コの字型」の三棟になりました。Kちゃんが2年生の時使っていた教室は古い校舎に有りました。古い校舎は9月から取り壊されることになっています。

 

  古い校舎は既に、周りに鉄骨の足場が組まれ、その上から全体をホロで覆われいます。校舎の各出入口には廃棄物がつまれており、入るとすれば二階の部分で中央の校舎とつながっている連絡橋を通るしかありません。3月末に引っ越しが完了して、5月の連休に最終チェックが行われた後、その連絡橋も鉄の扉(施錠)で封鎖されています。

 

 春休み各教室を回ってチェックした時に児童らの忘れ物を全て回収していたのでー妹驚いて「Kちゃん一体何を忘れたの?」と。Kちゃん表情を変えずに「小人のペンケース」。お母さんによると、Kちゃんペンケースを二つ持ってて、2学期に(2年の時に使ってた)「小人のペンケース」を持っていこうと自分の部屋の中を探したそうだ。

 

 ーでも、見当たらずに家中探したけどやっぱりなかったので、「もしかしたら、学校に忘れた」と。既にお母さんと話はついているらしく、お母さんとお姉ちゃんは「ここ(校門)で待っているから」と、妹に「先生お願いします」と頭を下げられた。Kちゃんも「先生、お願い」と。その時だけKちゃんの表情が切羽詰まったように見えた。

 

 妹は傍にいた教頭先生に事情を説明して、古い校舎へ行っていいか訊ねた。教頭先生こともなげに「いいでしょう」と、許可をくれた。実は、5月に校舎が封鎖されてからも、理科の実験器具とか社会の白地図とか、先生たちが忘れ物をとりに古い校舎へ入っていた。直ぐに教頭先生が、連絡橋の鉄扉の鍵を持ってきて渡してくれた。

 

 鍵を受け取った妹は、Kちゃんと一緒に中央校舎の2階にある連絡橋へ。時刻は午後4時半過ぎで、まだ日は高かった。校舎の中は蒸し暑くて、休みで人の動きがないせいか空気がどんよりとよどんでいた。いつの間にか妹の手をKちゃんの手が握っていた。

すべて妹が話してくれた内容をそのまま書いています。

                            つづきます。