専業主婦の徒然ぐさ

中学時代からン十年書き溜めた日記と画像を見ながら書いています

不思議な少女(5)

 みなさん、こんにちは。 前回からの続きです。少し間が空いたので(私の怠惰) 登場人物のおさらいをしますね。

私・・・私です(今から十数年前、妹から聞いた話をかいてます)                 妹・・・私の妹、小学校の臨時講師をしています。                      Kちゃん・・・小学三年、妹の勤める学校の児童、妹にすごくなついている        Rちゃん・・・妹の娘、小学校の高学年                            Rちゃんのともだち・・・妹の住むマンションの高層階に住んでる            父住職・・・住職先生のお父さん。お寺の元住職さん隣町にすんでいます。      自治会長さん・・・妹の住むマンションの会長さん、父住職の竹馬の友

 

 例によって気持ちのわるい話です。苦手な方はスルーしてくださいね。         マンションでのお祓いの当日(10月下旬です)、結局妹はその臨時行事(?)に参加することにー。理由は特になかったけど、まあ「珍しいもの見たさ」というか 娘のRちゃんがその出来事に直接かかわっていたことも多少あったかな?

 

 午後三時過ぎ、住職先生のお父さんがやってきた。マンションの集会室に入ってもらい。自治会長さんと段取り(お祓い)の事前打ち合わせ、妹はお茶出しをして他の役員さんと一緒にその話を聞いた。段取りといっても別段に何を用意するわけでなく、いきさつを父住職さんが穏やかに説明するのをみんなで拝聴していただけー

 

 会長さんは事前にその話を聞いているらしく、父住職さんの話が終わるまでほとんど口を挟まなかった。

 

 逢魔が時マンションの屋上に立つ「雪ん子」の目撃者に中学の先生がいた。その方は美術の先生で隣町の出身、父住職さんのかつての教え子だった。父住職はその縁から美術の先生を訪ねて、目撃した「雪ん子」の絵を詳しくかいてもらった。その絵を見た父住職、「雪ん子」ではなく、防空頭巾を被った「女子学生ではないか」と?

 

 父住職はさっそく郷土資料館をたずねて戦時中のことを調べたーすると、妹の住むマンションには戦争中ある工場が建っていたこと、そしてそこには勤労奉仕の女学校の生徒たちがいたことが分かった。彼女らは工場の行き帰りに必ず防空頭巾を被っていたー、そしてさらに調べていくと、一人の女子学生が空襲に遭ったことも

 

 昭和19年 駅から工場にかけてグラマンの空襲があったー、時間帯は夕方、ちょうど駅がこみあって工場勤務の人たちが帰宅する時間。その女子学生は友達と一緒に工場を出て、線路わきを通って帰宅していた。彼女はいつものように友達から少し遅れて一人で線路脇に立って、列車が来るのを眺めていた。

 

 女子学生には結婚の約束を交わした男性がいた。彼は軍役で南方に出征しており、彼女は彼が無事帰還するのを心待ちにしていたそうだ。まさかとおもいつつも、勤労奉仕の行きかえり線路わきから列車を眺めて彼の姿を追い求めていたらしい。それがあだになり彼女は逃げ遅れたーグラマンからの機銃掃射を受けて・・・

 

 そのことは、後日彼女の友人が書いた戦争悲話として郷土史に記載されていたー今よりも個人情報の保護が緩かった時代なので、父住職さん郷土史に記載されていた投稿者から(生存していた)、亡くなった女子学生とその婚約者の男性を特定した。「住職さん兼小学校の先生はさすがに顔が広いなあ」と妹は感心したー

 

 残念ながら、婚約者の男性は南方で戦死していたが、その家族(男性の妹さん)がその街で暮らしていた。その妹さんの子供さんが、な、なんと父住職の教え子だった。父住職はそのつてを利用して、亡くなった男性の実家をたずねて事情を説明して、男性の遺髪を一本、今日の為にもらい受けてきたのだった。

 

 父住職の考えでは、いまだにその女子学生は婚約者が帰ってくるのを屋上で待ってのではないか?なので、その遺髪を男性の名前を記した人形形(紙)に貼り、逢魔が時マンションの高層階からとばしてお祓いをすれば、その「雪ん子」(防空頭巾の女子学生)は人形とともに成仏して、今後あらわれないだろうとー

 

 自治会長さんや役員さんらは父住職の話に感心して「これでもう大丈夫」という雰囲気になっていた。妹も父住職の用意周到さと行動力に舌を巻く思いだったが、一方でそんなにうまくいくのだろうかとー。もし、「雪ん子」がその女子学生じゃなかったら?妹の不安げな表情を読み取ったのかー、自治会長さんが

 

 「大丈夫ですよ。普通のお祓いも一緒にやってもらいますからー」と。それを機に事前説明は終了して、父住職は横に置いてあった僧衣の入ったケースを前においた「失礼して着替えさせてもらいますよ」。それを聞いて妹たちは立ち上がった一足先にお祓いが行われる高層階に移動するためー

 

 着替えが終わった父住職は自治会長さんが、少し遅れて高層階まで案内してくることになっていた。